内分泌のお話し 第9回
甲状腺の病気で有名なバセドウ病、橋本病について前回、自己抗体と関係があると触れました。
難しくしてもいけないのですが、橋本病は甲状腺ホルモンの下がる病気として代表的ですが、
いつもいつもホルモンは低いのでしょうか?
橋本病はいつも甲状腺ホルモンが低いのか
今回は、少しイレギュラーな話をしようと思います。自己免疫性の慢性甲状腺炎が橋本病なのですが、
これは徐々に甲状腺が自己抗体で壊わされたり、ホルモンを作れなくなってしまうわけです。
その減少は徐々に進む方とゆっくり進むかは別として、基本は甲状腺のホルモンを作ることが
下手になっていくわけです。だからホルモンはへっていきます。
ところが、甲状腺にはホルモンをつくるという仕事とホルモンを貯めておく仕事もしています。
つまり工場であり倉庫の役目があります。
もし、倉庫が壊れるようなことがあると、貯めていた甲状腺ホルモンが外にでる、
すなわち血液に出てしまうと、甲状腺ホルモンの血中濃度が上がることがあります。
そうなると、どうなるでしょうか?
ホルモン産生が過剰であるバセドウ病のように甲状腺ホルモンが多すぎた甲状腺機能亢進症状が
でてくるわけです。
ホルモンが下がる病気がベースにあるのに亢進症状になってしまうのです。
このような、状況は何らかの感染のあとの亜急性甲状腺炎や、理由はより難しいのですが、
単純に甲状腺がなぜか壊れてしまう無痛性甲状腺炎などがおきると、バセドウ病でないのに
ホルモンが多いことになるわけで、これが橋本病をもっている人にも起こることもあるわけです。
だから、全部が全部、血中のホルモンが高いのがバセドウ病とは限らないのです。
筆 者
八木医院 内分泌・代謝専門医
薬師寺 史厚
2022/7/11